megamouthの葬列

長い旅路の終わり

経営者についてのとりとめのない回想

経営者の物語を書きたいと思った。 「取材」をしようと思い、経営者の書いた本と、経営者を主人公にした小説を幾つか図書館で借りてきて読んだ。私はそこに孤独が書かれていると思っていた。出資を受け、または個人保証で金を借りてハイリスクな勝負を挑む、…

あるW3C幹部の匿名インタビュー

Webの各種技術の標準化を行うW3C。秘密主義で知られるこの組織の幹部が、匿名を条件にインタビューに応じてくれた。元は英語のニュースサイトに掲載された文章であるが、少々ショッキングな内容を含むので、以下に拙訳する。原文: http://www.kh.rim.or.jp/…

ブルー・ルームにようこそ

1 俺はもう何のゲームにも勝てないし、何の学校も卒業できないし、何の仕事も満足に終えることができない、ということがわかったのは、深夜残業の連続で脳が焼き尽くされて、大量のSSRIを噛み砕いた後だった。生憎、自分を憐れんでクヨクヨするような性分で…

プログラマをクソコードで殴り続けると死ぬ

ここにクソコードがある。誰が作ったかはわからぬ。それが、どのような経緯でクソコードとなったのか、 あるいは、最初からクソコードであったのか、それらは全てクソコード自身が知るのみである。 ファーストコンタクト ある日、営業からシステム案件を打診…

誰も勃起してはならぬ

勃起することは男にとって全ての諸悪の根源である。勃起、言うなれば、男性の性の発露が陰に陽に、女性に対するセクハラとして、さらには暴行事件などとして顕在化することは改めて述べるまでもないだろう。それ以外にも勃起の害悪は社会に蔓延している。特…

マイ アイアン ラング

徹夜明けの朝、つけっぱなしのテレビから、朝のワイドショーから、ヒステリックな女の声がTVから流れてくる。 それはある女代議士の声で、部下の無能さを車の中で罵っているのだ。その声には単なる叱責とは異なった、病的で狂気を帯びた響きがある。それが白…

反なろう小説と、万能性の核

www.asahi.com死にました。どっかの水族館に入れば見に行けるなあと思っていたので残念です。私今、すごく疲れていて、本当はこんなのを書くべきじゃない精神状態なんですけど、マイスリーとデパスと酒という、私にとっては昏倒レベルのカクテルを飲み干した…

人売りIT企業とアウトサイダー達の物語

axia.co.jpというエントリを読んだ。 書かれている内容は大まかに事実だし、「人売りIT企業滅ぶべし」という主張にも賛成である。私自身も、何の付加価値も生み出さず、プロジェクトリスクも引き受けず、登録制の特定派遣制度がなくなったとたん、SESとか準…

二つの邂逅とその対話

崑崙に至る山麓の途中、網中と呼ばれる谷に小さな草庵がある。というよりあった。 そこには過去に偉大な仙人が住んでいたとも言う人がいるし、いや、あれはただ取るに足らないことを言うだけのペテン師であったという人もいる。ともかく、今、その草庵は荒れ…

司祭としての医師

以下に、人の死について、非常に生々しい話を書く。 なので、直近に肉親を亡くされた方や苦手な方はご遠慮いただきたい。 news.livedoor.comというネットニュースを見た。 そもそも私はくわばたりえが好きではなく、それは彼女が仕事として代弁しようとして…

302号室の住人

デザイナーの山内さんが独立したのは3年前のことだった。「さっそくデザイン事務所を借りようと思いましてね。都内でオフィスを探したんですよ」 ひとまず一人用のこじんまりとしたオフィスでも、というつもりだったが、 都内、という条件では家賃も保証金も…

漫談・フロントエンド談義

(出囃子)あー本日はお日柄もよろしゅう… え?そないな挨拶はええから、はよ、おもろい事言え? 今日はお客さんはプログラマばっかりやから、せっかちでんな。短気も美徳のうち言うわけやけども、わしも、ただの大阪のおっさんやさかいね、そない、おもろい…

ダーク&ロング

1 ほとんど暗闇のフロアに小さなスモークマシンが出した煙。そこに申し訳程度のレーザーが光る。 壁面にはVJの映像がプロジェクターで投影されているのに、WinAmpのVisualizationそのままで、僕はVJのいるブースを見上げたが、彼はリズムに乗りながらDJの名…

あるいは静かな春の日々、今月の懺悔

こんにちはmegamouthです。 今月は時が流れるのが早いような、まあ多分仕事の都合でそう感じているだけでしょうが、 4月最後の日、審判の時、今月の懺悔です。 Buzzらない日々 結果論ではあるのですけど、どうも今月は腰が引けたエントリが多くて、ひとっつ…

33歳のベースボールゲーム

「自伝を書けば5万円くれるってこと?シマさん本当にいいの?」 木村さんは意外そうに言った。 「いいですよ。ただし、ある程度長くないとダメですよ。4万字は書いてください」 私はきっぱりと答えた。「原稿用紙100枚分でしょ。自然に書けばそれぐらいにな…

就職氷河期世代について私が言える事

anond.hatelabo.jpを読んだ。なかなか怨念と諦念が込められた、いいエントリだと思った。さて、私も一応は氷河期「世代」の末期に属するわけだが、このエントリの筆者と違って真面目に生きる気が欠けていたし、大学を卒業していればそれなりに生計もたてられ…

増田で身バレさせたけど、とっくに過去の人間になっていた話

まだ懺悔の時間にはなっていないのだが、書こうとしていた話が思ったよりも厄介なので少し息抜きのエントリを書こうと思う。先日twitterで気まぐれに4年前に増田に書いたエントリを自分が書いた、という発言をした。 一応信用されるように、増田を編集して…

ダブリンのジョイス、蜂蜜と美味しんぼ

始めに断っておくが、この話にオチはないし、特に教訓めいた結論もない。最近の痛ましいニュースと共に、うむ。「蜂蜜は乳児に与えない」って話を、みんながいつ、どこで知ったかってのには、ちょっと興味がある。常識っていうほど常識だっけ?というか。妊…

学歴別!中小企業のIT技術者就活ガイド

今日から新年度である。新卒の読者諸兄におかれましては、おそらく最初の出社になるだろうから、さぞ緊張と期待で訳が分からなくなっているかと思うが、どうせ当分は大したことはやらせられないから、まあ肩の力を抜いて適当にやっておいてもらえれば良いと…

広告を貼ったりもしたけれど、私は元気です。今月の懺悔

年度末もそろそろ終わりですね。皆さまいかがお過ごしでしょうか。 月末までは少し日がありますが、なんか面倒なので、さっさと懺悔を済ましたいと思います。 Books&Apps様へ寄稿させていただきました blog.tinect.jp少し趣を変えて、啓蒙的な「主張」を入れ…

プログラマが「出来ません」と言う日

長い間、フリーランスなどという「便利屋」をこなしていると、馴染みの顧客から、トラブったプロジェクトに急遽参画してほしいという、ヘルプ案件が入ってきたりする。 嫌かと言われるとそうでもなく、むしろ、恩を着せて(足元を見るとも言う)高単価を取る…

ソ連のテープレコーダー

Aさんは小さい頃、両親の仕事の都合でソ連時代のロシアの田舎に住んでいたことがある。当時のロシアの片田舎には外国人学校もなく、Aさんは地元の公立小学校に通うことになった。学校では日本人は相当珍しく、アジア系の人種が多いその地域でもAさんは目立っ…

フーという猫

派遣会社に務める京子さんの話。ドライブの帰り、どしゃぶりの雨となった。 路面の状態も悪く、横風も強いなか、京子さんの軽自動車は慎重に山道を下っていた。それでも車体がガタガタと揺れるほどだった。 対向車線から、京子さんとは反対に山道を登ってい…

「ホームページを作っています」

20世紀末から00年代の前半の話をする。かつてWebとは「ホームページ」のことだった。 Web屋とは「ホームページ」と、トップページのFlash、あとはそこに付随するちょっとしたお問い合わせフォームのCGIを設置するか、制作するのが仕事であると思われた時代が…

ロング イナフ

200X 真っ白な大地に長大な人の列がある。 皆、下を向き、前の人の動きに合わせて少しずつ進んでいる。永遠に落ちることのない日が無数の影を落としている。巡礼者の列だ。私は、そこから少し離れた場所で、煙草を燻らせている。 かつては私もあの列にいたの…

スタープログラマの幻影

最近久々に「スタープログラマ」という言葉を聞いた。そういえば、私の中にもかつてそういう存在がいたなあ、と思い出した。 あえて定義することもないが、スタープログラマとは、先進的なOSSプロダクツを実装し、ブログなどでプログラミングを堂々と論じ、…

かくして私は通知を再開した。今月の懺悔

さて、年度末ですね。読者の皆様方におきましては、さぞご多忙のことと存じます。 私は「なろう」小説を書いていました。 Books&Apps様に寄稿させていただきました blog.tinect.jp今月は一本だけですが、1月の勢いで寄稿させていただきました。寄稿する内容…

ディス オールド マン

1 夜の街に降るはずだった雨は、この寒さで雪になってしまったようだった。 人材エージェント会社の営業を待っていた関口は、折りたたみ傘をさしていたが、風に巻き上げられた粉雪のいくつかは、彼の野暮ったいコートに吹き込んでしまう。 地下鉄の入り口か…

Webディレクターだけど、異世界の開発会社に転生した -後編-

www.megamouth.info の続き 宣言(マニフェスト) 夕方、王宮から帰ってきた僕たちを、魔術師たちが心配そうに見ている。あと9日。仕様はかなり簡略化されたとはいえ、この世界の王宮魔術師たちのスキルは未知数だ。皆の深刻な顔を見れば、それでもこのプロ…

Webディレクターだけど、異世界の開発会社に転生した -中編-

megamouth.hateblo.jpの続き 執政官(アドミニストレーター) 翌日、僕とエイダとジャムスは、公爵の館に来ていた。エイダ「あなたの言うとおり、私の伝手で向こうの執政官とは話を通したけど、どうするつもりなの?」と、不安そうに言った。まだ何も成果物…