megamouthの葬列

長い旅路の終わり

プログラマのための練習曲

プログラマと出世

就職することになって、つまりは私が職業プログラマになって、それを聞き知った叔父が私を訪ねてきた。「プログラマってのは、若いうちはいいが、長くはできないんだろう?」リビングの炬燵に潜り込んだ叔父は寒そうに体を震わすと、最初にそう尋ねた。 当時…

ずっと夜で

入った会社はWebサービスをやっていた。アクセスカウンターとかレンタル掲示板みたいな、そういうプリミティブな感じのウェッブ。今でも化石みたいに残っているとこがあるよね。teacupとか。もうないか。 当時はそういうことをしている会社をASP(Applicatio…

貧乏なおじさんへのささやかな贈り物

ネットバブル前夜、ホリエモンの会社がまだオン・ザ・エッジと呼ばれていた頃、パイナップルカンパニーというWeb制作会社が神戸にあって、社長のおじさんは、ナウいホームページを作ることにかけては関西随一と呼ばれていたその会社に見積もりを依頼したらし…

ご注文はCIですか?

いい歳なのにWebプログラマなんていう仕事をしている。 正確に言えばWeb屋だ。今や絶滅危惧種になったこの職業は、デザインをPhotoshopやIllustratorでちょっと修正するところから、サーバーのファイアウォールの設定をちょっと変更するところまで、Webに関…

学習期の終わり

1 いたるところで人々が配給食をもらうために列をなしている。 皆、小奇麗な格好をしているが、その瞳は虚ろで生気がない。 給食の順番が来たら、各人の埋め込み(インプラント)デバイスに通知されるシステムはとっくの昔からあるというのに、それでも何故…

巷説IT企業奇譚

山伏 他社に派遣されているエンジニアたちが月一回の帰社日にオフィスに集まってくると、社長の隣にいかめしい山伏が立っていて、集まった社員を水晶玉のようなまん丸な瞳でねめつけていたので、皆驚いた。社員とは対照的に社長は上機嫌の様子で、件の山伏の…

終わりの季節

職場を戦場に例えるのは良い趣味とは言えないが、この会社では的外れではないように思う。 ここではいつも、納期だけが決められた曖昧な仕事がやって来たかと思うと、最後の1ヶ月で決められた仕様や、営業の怒号が、哀願が、テスト不合格の結果や、クライア…

フェティシストの先輩はいくじなし

私が今のように酒飲みでなく、駆け出しのPerlプログラマだった頃、先輩がいた。私達が仕事のコードを書いている時、先輩は聞いたこともないフレームワークのテストをしていたり、英文のサイトを読んで大半の時間を過ごしていた。 たまに気が向くと、私のよう…

プログラマをクソコードで殴り続けると死ぬ

ここにクソコードがある。誰が作ったかはわからぬ。それが、どのような経緯でクソコードとなったのか、 あるいは、最初からクソコードであったのか、それらは全てクソコード自身が知るのみである。 ファーストコンタクト ある日、営業からシステム案件を打診…

33歳のベースボールゲーム

「自伝を書けば5万円くれるってこと?シマさん本当にいいの?」 木村さんは意外そうに言った。 「いいですよ。ただし、ある程度長くないとダメですよ。4万字は書いてください」 私はきっぱりと答えた。「原稿用紙100枚分でしょ。自然に書けばそれぐらいにな…

ロング イナフ

200X 真っ白な大地に長大な人の列がある。 皆、下を向き、前の人の動きに合わせて少しずつ進んでいる。永遠に落ちることのない日が無数の影を落としている。巡礼者の列だ。私は、そこから少し離れた場所で、煙草を燻らせている。 かつては私もあの列にいたの…

ディス オールド マン

1 夜の街に降るはずだった雨は、この寒さで雪になってしまったようだった。 人材エージェント会社の営業を待っていた関口は、折りたたみ傘をさしていたが、風に巻き上げられた粉雪のいくつかは、彼の野暮ったいコートに吹き込んでしまう。 地下鉄の入り口か…

マッド・ワールド

先輩がデスクにやってくる。 今年四月に入ったばかりの僕のデスクには椅子が一つしかないので、ディスプレイを見るために、先輩は自然と僕の脇にしゃがまなければならない。 それはまるで、先輩が新米エンジニアである僕に跪いているように見える。そうして…

汎用機とその風景

マウント 1999年頃だったと思うが、小学校からの幼馴染と会う機会があった。その頃、私はまだ大学生で、幼馴染は高校を卒業して、なんとか情報サービス、という名前のIT系の会社に就職していた。 思い出話に花を咲かせた後、お互いの近況に話が及んだ。 私は…

沈黙のプログラマ

プログラマと言えば寡黙、というイメージがある。実際のところ、彼らは寡黙というよりはプログラム以外の話をするのが苦手なだけで、専門分野について話を始めると、こちらが驚くほど饒舌であったりもするものだが、アルゴリズムの計算量の話をしない普通の…

無N.O.の人

「頭の悪い奴にはできないが、本当に頭の良い奴はこんな仕事はしない」とは、ある戦闘機パイロットの言葉らしいが、プログラマも似たようなもので、多くの技術書や、他人のコードを読み下し、膨大な知識を頭の中に放り込まないとまともなプログラムが書けな…

消えたプログラマの残したものは

システム開発の佳境に、開発メンバーが突然出社しなくなってしまう。携帯にも連絡がつかず、3日ほど音信不通になったので、さすがに心配になった上司が大家と共に自宅を訪れると、夕日が差し込む部屋の真ん中に、当の本人が何の表情も浮かべずにただ座ってい…

Emacsという沼

最近、マイスリー(睡眠導入剤)の影響なのか決まって悪夢を見る。今日の悪夢は格別で、年下のエンジニア達が口々にEmacsをDisってきて、私はムキになってEmacsではこれが出来る、あれが出来ると主張するのだが、それら全てがSublimeTextで出来ると言い返さ…

SIerについて僕が知っていること

getlife.hateblo.jpという記事があって、paizaお得意のポジショントーク煽りにSIerで頑張ってるオジさんがブチ切れといった構図の話なわけだが、元のPDFすら読まずにイケてる環境のWEB系の労働生産性がイケてないSIerのたった三割しかない件 - プロマネブロ…

僕と先生について

はじめに断っておくと、僕は老朽化したアパートの一室にある壁の染みだ。 煙草の煙ですっかり黄ばんだ壁紙に染み付いた、見ようによっては人型に見えなくもない黒い影のようなもの、といった外見をしている僕は、普通考えられるとおり、人格を有してはいない…