megamouthの葬列

長い旅路の終わり

キレる中年プログラマ

id:cildさんが久しぶりにブログを更新して、それが実に良かった。
だって

鉄の棒でそこらじゅうを狂ったように叩きまくって、大声で罵倒した。そして最大ボリュウムで「二度とオレに指図するな!」と10回くらい怒鳴った。

だぜ?

人がキレているのを見るとふつう不快な気分になる。見苦しいなあと思ってしまう。しかし、本当はキレた本人が一番傷ついているのである。キレた後もしばらくドキドキして、自分は一時の感情のピークで何をしてしまったのだろうか、友情とか信頼とかそういう取り返しのつかないものを失ってしまったんじゃないだろうか、と不安になるのである。で、しばらくクヨクヨ考えているうちに、考えているのも面倒になってきて、キレちゃったものは仕方ない。もはやどうでもいい。と自暴自棄気味になって、まるで何もなかったように日常を過ごし始めるのだけど、その後も返す返す、ああキレちゃったなあ。と思い出して、もう自分は誰にも冷静な人間だとは思ってもらえないのだと、夜のふとした瞬間に、全身が真っ赤になるぐらい恥ずかしくなって、叫びながら走り出したくなるのである。

中年特有の、あまり正当性のない、赤ちゃん返りみたいなキレ方には身に覚えがあるから、こういう心理がよく理解できる。鉄の棒を持ち出したりはしていないが(どこから出てきたんだろう?鉄の棒)感情的なメールを書いて、やっぱりやめて、もう一度ゴミ箱から下書きに戻して、感情的な部分をイヤミ程度に見えるように書き直しているうちに2時間ぐらいたってました、とかそういうのはよくある。

なんでこんなに腹がたつことがあるのか、本当にわからない。このエントリを書くために幾つか仮説をたててみたが、どれも嘘くさくて論考を進める気にもならない。ものすごく経験を積んできたのに、若者と同じ扱いしかされないのが気にくわない説とか、仕事の完成度が上がれば上がるほど上流の変化に対応するための精神的な余裕は逓減して怒りに変わる説とか、なかなか勃起しないから、体がエネルギーを求めて怒り出す説とか、そういうのを思いつくし、4千字ぐらいは書けそうだけど、全部疑わしくて、アホみたいだから、面倒になって、それはね、十分な金をもらっていないからです、というほうがよっぽど説得力のある説に感じてしまう。少なくとも貰うもん貰っときゃ腹が立たないのは直感的にわかるから、年功序列って良かったよなあ、と失われた世界を思う。


だいたい、これぐらいの歳になれば、出世の道は閉ざされても、月一回ぐらいは若い社員と連れ立って、今日はみんなに寿司を奢ってやろうう、おいおい、もちろん回らないやつだよ、大将、この子たちにコハダを一つ。とか言えるのではなかったのか?どうして、ペアを組まされた新人のプログラマと、見慣れない街をさまよい歩いた先のフレッシュネスバーガーに入って、ハンバーガー1個で500円以上もすんのかよマジかよと思いながらも平静を装って、一番安いクラシックバーガーでフライドポテトセットにして、え、奢ってくれないのみたいな視線をわかってて無視するハメになるのかわからない。大学生みたいな自分の金銭感覚と可処分所得が信じられない。そんなに悪いことしてきたんだろうか。

だから、ルサンチマンとか、成功している人間に対する嫉妬がすごいわけで、今日は実は違うエントリ考えてたんだけども、武蔵小杉の排水が壊れたタワーマンションで、住人である一流企業のITエンジニアたちが対策を考えるという話で、普通に不謹慎で不快極まりないから、一行も書かずに捨てたんだけど、もうなんか、下水管はネットワークトポロジ的にはトークンパッシングに近似するから、上流にいけばいくほど細くなるように帯域制限すべきだ、とか汚水槽をオートスケールするために駐車場に垂れ流すとか、そういう何一つおもしろくなくて、単に金持ちをバカにするだけのエントリを嬉々として考えているわけだから、地獄はここにある。確実に。


こういうエントリ書くと「中年になったら仕組みを作る側にならないと厳しいよね」というなんちゃって六本木勝ち組サラリーマンのうんこみたいなコメントがつくに決まっているんだけど、実はそういうのを知りたくて上流工程の中程ぐらいをしばらく体験してみたんだけれど、とりあえず結論としては「どやんすー ©源さくら」と言い続ける仕事という印象しかない。

とりあえず顧客の前ではもっともらしいことを言っておいて、実際の問題解決のフェーズになったら「どやんすーどやんすー(どうしようどうしよう)」とほうぼうに電話とメールをかけまくって、Googleのキーワード広告踏みまくって、「どやんかしましょう」と言ってくれる人を探す仕事だった、ということで、最初にその光景を見た時はなんか唖然とした。ああ、こういう連中の「どやんすー」に律儀に答えてたんだな、自分。って思った。それでプロパーは年収1000万近くあるから。こっちは手取り23万なのに。びっくり資本主義。

アホらしくなったし、仕事しなくてもいっこうにバレる気配もないので、上流が捕まえてきたベンダーがどやんかしてくれるのをただ観察することにしたら、工程がどんどん後ろにズレはじめて、明らかにどうにもならなくなってて、それに気づいているの自分しかいなくて、それとなく報告しても無反応というか、「で、どやんす?」しか言わないから、毎日find -mtime -1やってお前ら全然ステージング更新してねえじゃねえか、サボってんじゃねえぞ、とか言っても良かったんだけど、自分が下流にいる時にそんな事されたら自害してるから、言わないことにして、優しく見守ることにしたら、ベンダーが明らかに嘘つきはじめて、んなわけねえじゃん、と思いながら真に受けたフリして「なかなか難しいみたいっすね」って上に放り投げて、どうすんのかな、って見てたら、また上流が「どやんすー」言い始めて。

上流工程は人日3万のSESの高卒でもシステム構築出来るようにアレンジするのが仕事なんです、とかそういうの全部ウソなんだよね。もしそれが出来ているとしたら、薄給でどやんかしてくれるベンダーを捕まえてるか、誰でも出来る仕事を高く売りつけてるか、のどっちか。で、君たちは後者のほうがビジネス・インテリジェンスに長けているとか言うわけでしょ?虚しくない?それ?


まあそんな感じでやいやい言うておりますけども、このエントリ書いたらわりとすっきりしたので、しばらくはキレないと思う。読んでくれてありがとう。みんなありがとう。