megamouthの葬列

長い旅路の終わり

Welqは信用できない。では何を信用すべきなのか?

もはや古い話題ですが、WelqというDeNAが運営する医療情報キュレーションサイトが公開停止しました。

www.itmedia.co.jp

経緯としては、上記の記事なり検索するなりして各自調べていただければいいと思いますが、ようするに、クラウドソーシングで集めたライターに二束三文で記事を書かせてたら、典拠の怪しい情報が集まりまくって、医療情報なんていうクリティカルな情報でそんなことしていいと思ってんのか、という事で炎上あそばされた(そして他のキュレーションサイトに延焼しまくった)という流れになります。

この話題、最近は派手にCMを打ってない上場企業のサイトだった事もあって、それなりに社会的インパクトがあったようで、私が二日酔いの頭でぼけーと見ていたTVのワイドショーで取り上げられる程だったわけですが、

「やはりネットの情報はあてにならない。医療情報を得たいなら医者に行くなりして、信頼できるソースを自分で選別すべき」

という論点はあっても

「では、ネット上のどういう情報が信頼に値するのか。何を基準にすればいいのか」

という事はあまり誰も言ってないような気がします。

そもそも病気かな?と思ったらググるんじゃなくて医者行け、っていうのは本当その通りだと思うんですが、Welqがそれなりにアクセスを集めていたらしいことから、医者に行く前に医療情報をググってみたい、という需要はそれなりにあるようです。

なので、極論すればWikipediaの医療系項目と同じように、医療情報が検索されたら

「これらの情報は、1文字1円で書かれたクソ情報かも知れないので、お前はしかるべき医療機関に行け」

と赤字でデカデカと出してもらうとかすれば、いいと思うんですが、

www.itmedia.co.jp

こんなことまでしてるらしいので、Googleにその気はない、ということです。

で、2016年現在、Webで病気について知りたいと思った時に、何を基準に信用すればいいのか、というかそもそも本当に信頼すべき情報なんてWebにあるのか?という話題です。

医療従事者が書いた情報は信頼できるか?

Welqがパクり情報元にしていたのは、Web上にある現役医師などの医療従事者の文責で書かれた医療情報だったらしいのですが、医療従事者といっても、本当に十把一絡げで、例えば「肩こり」という症例に関して言えば、医師だけでも、整形外科から心療内科まで、多方面の分野にあたる必要がありますし、整骨院という街中2km四方に10軒はあるであろう人たちまで関わってきて、東洋医学やオカルトに近いものまで情報がカオスに入り乱れることになります。

Welqのライターもそういう所から、一般論っぽく見えるように記事をまとめろって言われていたわけですから、そりゃ「肩こりの原因は幽霊と言われています」とかいうヘンテコ記事が出て来るのも無理はないですよね。

だから、この点で言えば、自力で「この医師は信用できそう、この人は怪しいな。中国鍼!?そういうのもあるのか。」

孤独のグルメばりにサイトをまわっても、気晴らしにはなっても、あまり有益な情報は手に入りそうにないようです。

政府系機関の情報は信頼できるか?というかあるのか?

日本で言うと厚労省のことですが、例えばドメインにgo.jpとついてるサイトなら信頼できそうな気がしますよね。

例えば、米国なら国立衛生研究所(NIH)というのがあって、その傘下の研究所サイトなどが一般向けの医療情報を公開していたりします。

「アスペ」という不適切スラングで有名な「アスペルガー症候群(asperger syndrome)」を調べてみると、

www.ninds.nih.gov

というように、傘下の国立神経疾患・脳卒中研究所(NINDS)のサイトが一般向けに、病気の概要や治療法、支援組織、論文へのリンクなどの情報を提供しています。

ちなみにこのサイト、日本で「アスペルガー症候群」という単語自体が全く知られていなくて、父母の会などのページしか日本語情報が無かった頃(少なくとも15年前)からこの形式で存在していて、今も最新の情報が更新され続けています。(嘘だと思うならweb archiveのwaybackマシンなどで確認してみてください)

こういう公共機関がキチンと国民向けに正確な情報を提供し続けているという姿勢は、本当IT先進国という印象ですね。

ちなみに日本だと国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センターという組織がNINDSに当たるのだと思いますが、なんというか、すごい…医療機関向けですね。管轄が違うという話なのでしょうか。

e-ヘルスネット

とはいえ、我が国も手をこまねていたわけではありません。健康増進総合支援システム情報提供事業といういかめしい名前で、一般向けの医療情報の提供を平成20年からWebで始めました。

e-ヘルスネット 情報提供

燦然と輝く"go.jp"のドメイン!すごいですね。早速アスペルガー症候群のページを見てみましょう

アスペルガー症候群について | e-ヘルスネット 情報提供

うん一般論だね!(プロテインだね!の口調で)

「肩こり」でも検索してみましょう。

肩こり | 検索結果: | e-ヘルスネット 情報提供

Welqよりは信用できると頭ではわかっているんですが、何か似たようなことが書かれているような気もして、少し不安になりますね。しかし、政府機関が正確な情報を一般に公開しよう、という動きは評価できるのではないかな、と思います。

国は税金で一般向け医療情報を提供すべきなのか?

私は、医療情報というクリティカルな情報は、個々の医師がその身元も確認できないようなブログで記述するより、厚労省のような組織が、その権威と責任を持って、それらをアーカイブして一般に提供してもらえれば、Webという世界も少しは信用できるのに、と考えています。

それに厚労省傘下には様々な医療系組織、研究所があるわけですから、それらを横断的に利用すれば、Webで専門医療機関や支援組織を紹介したりする、といったような「医者に行く前にググる」という行為が少しでも前向きに働くような未来も考えられるわけです。

そんなものに税金使うんじゃねーよという意見ももちろんあると思いますし、そのあたりは議論していただければと思いますが、最後にe-ヘルスネットである健康増進総合支援システム情報提供事業行政事業レビューのPDFにリンクして終わりたいと思います。

平成28年度行政事業レビューシート 健康増進総合支援システム(保守・運用)

年間3100万円かけて、800万PV(月間あたり約67万PV)ですか。このブログももう少し頑張ればそれぐらいいけるかな?(白目)

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